礼拝説教

パウロの最後の願いと御言葉の力


2026年05月31日

聖書箇所:テモテへの手紙第二 4章6節、9〜13節

本日は、使徒パウロが晩年に残した遺言のような手紙を通して、今の時代を生きる私たちが握りしめるべき最も重要なものは何なのかを共に黙想します。紀元67年頃、皇帝ネロの激しい迫害の中、ローマの冷たい牢獄に投獄されていたパウロは、自身の殉教が差し迫っていることを悟り、愛するテモテに向けてこの手紙を書きました。

■ 喜びと希望に満ちた「世を去る時」
パウロは自らの死を「注ぎのささげ物」と表現しました。これは旧約時代の祭祀において最後にぶどう酒などを注ぐ儀式であり、「礼拝の完成」を意味します。パウロは自身の命までも主へのいけにえとして余すところなく注ぎ出し、人生を締めくくろうとしていました。

また、「世を去る時」という言葉は、ギリシャ語で「アナリュシス」といい、当時のローマの兵士たちが戦争を終えて故郷へ帰るためにテントを撤収する時に使われた言葉です。パウロにとって死とは虚しい終わりではなく、永遠の故郷へ帰り、キリストと共にあるという希望と喜びに満ちた出発でした。

■ 孤独な牢獄での切実な願いと教会の継承
死を目前にしたパウロは、「何とかして早く私のところに来てください」とテモテに切実に願います。同労者であるデマスは世を愛して去り、他の者もそれぞれの任地へ向かい、パウロのそばにはルカしかいませんでした。

しかし、パウロがテモテを呼んだのは単なる寂しさからだけではありません。自分がいなくなった後も、生ける神の御言葉の力によって教会が建て上げられ、信仰の共同体が続いていくことを願って、最後の使命を託そうとしたのです。私たちの信仰も、決して一人では守り抜けません。御言葉を中心として互いに助け合い、倒れた者を立たせるような共同体であることが不可欠です。

■ 魂の糧としての御言葉
パウロの最後の願いの核心は、13節に記されています。迫り来る冬の寒さをしのぐための「外套」と共に、「書物、特に羊皮紙の物」を持ってきてほしいと頼みました。高価で丈夫な羊皮紙には、神の御言葉が記されていました。

死を目前にした偉大な使徒が最後に求めたのは、皇帝への嘆願書でも一時的な安楽でもなく、魂を養う神の御言葉でした。生涯にわたって御言葉を伝え続けたパウロは、人生の最後の瞬間まで御言葉を読み、黙想することを渇望していたのです。

私たちもパウロのように、主の御言葉を昼も夜も黙想し、人生の苦難の中で深く握りしめる者となりましょう。いよいよ明日から新しい月を迎えます。パウロが迎えた冬の牢獄のような厳しい状況にあっても、御言葉を魂の糧とし、霊的に満たされた豊かな日々を過ごしながら、主と共に確かな実りを追い求めることができますように。

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